これから満月に向かう途中の上弦の月
日の入り後、宵の初めに南中し、深夜には西の空へと沈んでいきます
この宵の口の、影をまとった月が、僕はとても好きです
きっと天文ファンの誰もがそうだと思いますが、小学生だった僕が、自分の小さな望遠鏡を手にして、初めて見た天体は月でした
その時に、なぜ苦労をしてでも望遠鏡を欲しいと思ったのかは、どうしても思い出せません
今からしてみれば、まさしく子供のオモチャ程度の望遠鏡でした
予備知識をあまり持たない少年は、当然のように、対物レンズを月へと向けました
そこには、肉眼では到底見る事の出来ない世界が広がっていました
僕は、来る日も来る日、夢中で見続けました
幼かった僕の心に、「見る」という視覚を通して感じられる幸せを、静かに静かに刷り込んでいったのは、この小さな望遠鏡と月だったのだと思います
月の美しさを、もっとも良く観察できるのは、強烈な明るさを放つ満月ではなく、陰影を伴った、上弦の月の頃だと僕は思います
特に、昼と夜の境目付近は、クレーターなどの地形に、長い影が落ちて立体感が増します
一見のっぺりとした月の表面が、実はとてつもなくゴツゴツと荒々しい地形であるのだとわかります
幼い頃、小さな望遠鏡で見上げた、その同じ月が、50歳を過ぎた今でも、僕の童心をくすぐってやみません
そしてまた上弦の月がやってきました